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浦和地方裁判所 昭和61年(ヲ)521号 決定

申立人 板倉昭平

右申立人代理人弁護士 水島正明

主文

申立人の本件申立をいずれも却下する。

理由

一  本件申立の趣旨及び理由は別紙執行異議及び執行停止の申立と題する書面記載のとおりで、その主たる理由は、基本事件の債務者兼所有者である本件申立人に対する競売開始決定の送達の無効が同決定の無効及びその後の執行処分の無効を招来したというにある。

二  そこで、本件申立の当否について判断するに、本件記録によれば、当裁判所は、昭和六〇年四月四日、基本事件につき競売開始決定をなし、その後の手続を経たうえ同六一年二月一〇日、売却許可決定をなし、同決定は告知された日の翌日である同年同月一一日から七日の経過をもって確定するに至り、その後、買受人は同年三月二七日買受代金を納付し、更にその後である同年五月二七日、申立人は本申立に及んだものと認められる。

三  ところで、民事執行法一一条には、執行裁判所がなした執行処分のうち民事執行法上執行抗告を許されないものについては、執行異議を申立ることができる旨規定され、その申立期間については別段の定めがないものの、いわゆる実体上の異議事由については、代金納付によって買受人が目的不動産の所有権を取得し、その所有権の取得は担保権の不存在又は消滅によって影響を受けない(民事執行法一八四条)ことから、その申立期間が代金納付時までと解されることとの関連及び執行手続安定の要請から、手続上の異議事由をもってなす申立もまた買受人の代金納付時までであると解するのが相当である。

四  以上によれば、本件申立は、競売開始決定の送達の瑕疵をその理由とするものであるが、すでに、買受人の代金納付がなされた後の申立であることは前認定のとおりであるから、右送達手続に瑕疵が存するか否かについて判断するまでもなく、申立人の本件申立は不適法なものであるといわざるを得ない。よって、主文のとおり決定する。

(裁判官 平林慶一)

〈以下省略〉

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